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改正SOLAS条約の発効、その後……

SOLAS条約(ソーラス条約)って何?
 1912年に北大西洋上で起きた「タイタニック号沈没事故」を契機として定められた、「海上における人命の安全のための国際条約」が、『SOLAS(ソーラス)条約』です。
 SOLAS条約のあらましについては、「改正SOLAS条約で釣り場が消えた!」をご覧ください。釣り人の視点から、改正SOLAS条約が釣りにもたらす影響を、できるだけわかりやすく解説してあります。

改正SOLAS条約規制エリア以外でも摘発される!
 2005年4月7日、小田原漁港の立入禁止地区で釣りをしていたとして、釣り人24人が軽犯罪法違反(禁止区域立ち入り)の疑いで書類送検されています。
※神奈川新聞ローカルニュース
 「立ち入り禁止地区の釣りで書類送検/小田原署」

 2004年11月27日・28日・30日と、SOLAS規制の対象エリアではない、神奈川県平塚新港で侵入者の摘発が行われ、3日間で20数名の釣り人がしょっ引かれました
平塚警察署に事実確認したところ、副署長から直々にご回答いただきました。今回の経緯は以下の通り。

【平塚警察署副署長の回答】
−2004年12月3日午後1時30分に電話取材−

 平塚新港防波堤には、立入禁止の看板とフェンス・ゲートが設けられており、無意識に入り込んでしまう場所ではない。過去には事故も起きており、釣りをするのに安全な場所ではないのだが、釣り人の立ち入りが後を絶たない。従前より事故防止の観点から、平塚市役所とも協力して侵入者に対して警告を行ってきたが、フェンスを破壊したり、オーバーハングした部分を伝わって侵入する釣り人が絶えず、防災放送を通じての退去勧告にも応じないため"警告ではなく、摘発の段階に入った"と判断した。今後も不法侵入者の排除、摘発は継続して行っていく。警邏(パトロール)の際に発見すれば
、釣り人に限らず侵入者は摘発する。
 また、迷惑駐車、ゴミの放置など地域環境への悪影響も看過できる状態ではなくなっている。これは平塚に限った事ではなく、川崎港、横浜港、津久井湖、相模湖など神奈川県下各地域で釣り人による迷惑事例として取り上げられており、摘発の対象として厳しく臨む。施設や設備を壊して侵入した場合は、軽犯罪法違反による摘発ではなく刑事犯として検挙する。
今年になってから取り締まりを強化した理由は、台風や地震といった海辺においても危険な天災が相次いでおり、防波堤や護岸などの水辺は特に危険であるという判断もある。
私(副署長)個人としても釣りは好きなので釣り人の心情はわかるが、万が一の事故で遺された家族の事を考えるとともに、社会を構成する一員としての自覚を持った行動をしていただきたい。ちなみに摘発された釣り人にはライフジャケットを着用していた者はほとんどいない。安全とされている釣り場に出掛ける時でも、充分な安全対策とマナーを心掛けて、一日を楽しく過ごして欲しい。くれぐれも地域の迷惑になるような行動は慎んでいただきたい。
※丁寧にご回答くださった神奈川県警平塚警察署に感謝いたします
平塚新港はそんなに危険な場所なのか?
 調べてみると、相模川から流入する土砂を防ぐために港の開口部が海側(西側)を向いており、海が荒れると高波が押し寄せる。さらに「あびき」と呼ばれる周期30〜40分くらいの海面上下動が、強い南西風が吹いただけでも発生して漁船が損傷してしまうため、漁業者も漁船を停泊させておけないという状況。"あびき"は長崎港などでは数mに達する事もあり、平塚新港においても漁船を停泊しておけないほどですから、危険な場所である事は間違いなさそうです。「港として構造上の欠陥がある」との批判も出ている状況で事故が起きて安全管理責任を問われたら、平塚市みなと水産課は非常に厳しい立場に立たされます。特に今年は黒潮の影響による潮位の上昇や、観測史上最高回数の台風上陸により各地で甚大な被害が発生していますから、対策の手を打たねばならなかったのでしょう。
※参考「湘南新聞2003年(平成15年)9月13日(土)《1484号》
   「長崎海洋気象台:海洋の知識−あびき−

 改正SOLAS条約に伴う規制エリア以外でも、立入禁止区域に侵入するとキツイお灸をすえられます。確かに釣り人側にも非はありますし、「陸っぱり釣り人排除根絶運動中!?」とでも勘繰りたくなるような動きになっていますから、フェンスやゲートを設置している場所に侵入するのは絶対やめましょう。ゴミ・釣り糸・仕掛けの放置、迷惑駐車なども「釣り人はモラルの欠片もない」という世論形成の口実を与えることになります。世論を敵に回したら、どんな申し入れや陳情を行っても、「釣り人のエゴ」で片付けられてしまいます。くれぐれもマナーやモラルを心掛け、安全にも配慮した慎重な行動を心掛けてください。
世論が怖いぞ、テレビのニュース報道
 2004年12月6日、テレビ朝日「スーパーJチャンネル」の東扇島報道で、まんまと釣り人がハメられちゃいました。「立入禁止場所にフェンスを乗り越えて入り込むマナー無視の釣り人」というニュースですが、取材名目でフェンスを開放しておいて、頃合いを見計らって施錠しちゃったんですね。取材陣は岸壁で竿を出す釣り人を船で海側から撮り、お家に帰るためにフェンスを乗り越える(施錠されてるから乗り越えるしかない)釣り人を撮影、レポーターが直撃取材したそうです。これは朝日新聞が珊瑚に記者本人が落書きをして報道したとか、テレビ朝日が京都の暴走族に「派手にやってくれ」と指示(演出?)したとされる「ヤラセ(捏造)報道」とは少し手口が違いますが、この報道手法が事実だとすれば誠実な報道とは言えません。
このニュースが放送されたら一般の視聴者はどう思うでしょう?
 「あ〜、やっぱり釣り人は馬鹿で、自分勝手で、モラルの欠片も
  ない迷惑な厄介者だわ!」
という世論が形成されていくわけです。釣り人にしてみれば困った話です……。とにかく、ゲートやフェンスで立ち入りを規制している場所には行かない事です。行政やマスコミによるどんな仕掛けが待ち受けているか、わかったものではありません。釣り人が仕掛けに引っ掛かり、網に掛けられていたのではシャレになりません。ともあれ、事の顛末は全釣協HPに掲載されていますからご覧ください。
※参考全釣協HP港湾立ち入り制限取材でトラブル

 2005年1月7日、日本テレビ『ニュースプラス1』憤激リポートで「怒りの港町・無法釣りマナー」として、横浜港大黒埠頭・本牧埠頭の不法侵入釣り人を糾弾するニュースが放送されました。いわゆる "黙認釣り場" ではない、「厳重な立入規制」がされている場所に侵入する一部の釣り人が悪いんですが、視聴者の主婦やご隠居さん達には「釣り人ってヤツぁマナーが悪い」と刷り込まれていくでしょう。そしてジワジワと、確実に港湾部から釣り人を排除する世論が醸成されていくような、イヤ〜な感じがします。この"世論"が一番怖ろしいのです。例えばタバコ。15年ほど前まではどこのレストラン、ホテル、企業の応接室にも灰皿があり、無い方がおかしいくらいでした。それが今ではすっかり姿を消しています。

 テレ朝の報道も日テレの報道も、それが仮に恣意的な偏向報道であったとしても、厳重な立入禁止場所に侵入している釣り人の存在は紛れもない事実ですから、「マスコミのたわ言」などと無視はできません。今すぐ反省すべき点は反省し、改めるべき点は改めないと、愛煙家の轍を踏む事になりそうです。
摘発の根拠とは?
 摘発の根拠となる法律は改正SOLAS条約の発効に合わせて施行された「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」ではなく現行法によります。
軽犯罪法第1条32号】<罰則:拘留(※2)又は科料に処する>
 「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて
  入つた者」
刑法第130条(住居侵入等)
 「正当な理由なく、人の住居もしくは人の看取する邸宅、建造物
  もしくは艦船に侵入し、または要求を受けたにも関わらず立ち
  退かなかった者は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に
  処す」
 摘発を受けた場合、身柄を拘束された上で取り調べを受け、身元引受人が来るまで勾留(※1)されます。軽犯罪法違反での摘発の場合は"拘留(※2)・科料"、刑法第130条で摘発の場合は"懲役・罰金"です。違法行為の処罰は、警察→検察→裁判所の判決という手順を経て処罰は決定されるので、いきなり科料や罰金を警察署で支払わされるという事はあり得ません。1万円未満の科料はともかく、それ以上の"罰金"となると前科が付きます。科料は軽微な違反行為に対する処罰で1千円〜1万円未満ですが、1万円以上の罰金となると、犯罪行為を犯した罪によって"罰金刑"に処せられた事になります。お勤めの会社や職場によっては懲戒処分の対象になります。サラリーマンの方は就業規則を確認してみてください。

※1.勾留(こうりゅう)
  =被告人や被疑者を取り調べのためにとどめおくこと。
※2.拘留(こうりゅう)
  =刑罰として1日以上30日未満拘置所にとどめおくこと。
摘発されたらこうなる!
 神奈川県警鶴見警察署に釣り人の摘発について、2004年8月2日に事実確認取材をし、鶴見警察署副署長から回答をいただきました。
【侵入者の摘発について】
 鶴見警察署所轄の立入禁止場所への侵入者の摘発は行っているし、今後も行っていく。この摘発についてSOLAS条約は関係なく、危険・犯罪の未然防止という観点から、軽犯罪法第1条32号「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者」として摘発を行っている。
【摘発を受けた場合】
 身元確認、指紋採取、調書、顔写真、侵入目的の証拠として釣具や釣果の写真も撮る。成人ならば上記取り調べが済めば帰宅させ、未成年者の場合は保護者に連絡の上、引き取りに来てもらっている。
※2007年11月24日に摘発された方から情報をいただきました。
 成人であっても身元引受人を要求されたそうです。
 取り調べは3時間を超え、非常に疲れたとの事。
 大黒周辺は警告無しの一発アウトとなるので、立入禁止エリアには
 絶対に立ち入らない事。

【処罰について】
 立入禁止エリアへの侵入者は「軽犯罪法第1条32号」で摘発している。処罰は検察を経て裁判によって決定するので、警察署で科料を支払わされるという事はあり得ないし、軽犯罪法第1条32号の罰則は拘留又は科料なので、1万円を超える処罰はあり得ない。
【市民へのアナウンスについて】
 広報やマスコミを通じて、危険な場所や立入禁止場所へは立ち入らないように呼び掛ける。
【市民・釣り人の皆さんへのお願い】
 警察は法に基づき、犯罪や事故の未然防止のために摘発を行うのが職務なので、通報や要請を受ければ当然、摘発する。まず、立入禁止エリアには入らない事と、施設管理者や港湾管理者から退去の警告を受けたら速やかに退去して欲しい。
上記の摘発事例や措置は鶴見警察署の対応であって、全国一律の
 対応ではありません。侵入した場所の状況や施設、初犯か再犯か
 でも違ってくるそうです。

名古屋港における状況と対応
 2004年8月2日名古屋水上警察署に取材し、防犯課長から回答をいただきました。
【名古屋港の状況について】
 名古屋港においては、立入禁止エリアへの侵入事例はあったが、警告によって速やかに退去しており、摘発にいたるまでの事例は今のところ無く、釣り人および市民のみなさんのご理解とご協力に感謝する。ただし、人為的なフェンスの損壊が見つかっているので、このような悪質事例を発見したり、告発があれば厳正な対処を行う。
【対応とお願い】
警邏(パトロール)は随時行っており、港湾管理組合、海上保安庁との連携も取っていく。
通報や要請があれば侵入者に退去勧告、排除、摘発するのが警察の職務なので、立入禁止場所には入らないように、今後ともご理解とご協力をお願いしたいとの事でした。

※丁寧にご回答くださった神奈川県警鶴見警察署・愛知県警名古屋水上警察署に
 感謝いたします。


 港湾施設を所有する企業や港湾管理組合などの職員には「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」によって"侵入者の通報義務"が課せられています。侵入者を黙認したりすると、同法第61条において50万円以下の罰金に処せられる事になっていますから、お目こぼしは期待できません。見つかったら即通報、摘発されます。
過剰な立入規制はなぜ?
 港の入り口部分をフェンスでふさいだり、外国航路を通る船の着く埠頭以外の場所まで入れないようにフェンスが作られ「これはけしからん!」という情報も寄せられています。ご意見ごもっともなのですが、「なぜ入り口をふさいだのか?」。事情をちゃんと調べて、きちんとした道筋を立て、規制エリア以外の場所の開放を求めるのではなくては、ただの愚痴です。 
 実はSOLAS条約の発効直前まで国内法整備に手間取り、現場への具体的な対策指示が遅れていました。条約の保安基準を満たすべく、取り急いで工事を進めた現場がたくさんあります。埠頭の規制対象部分だけを囲うとなると数キロのフェンスが必要だが、予算も工期も足りないので、とりあえず入り口部分をふさいで承認を受けたそうです。
 こういった事情がわかっていれば、翌年度に予算を確保して適正範囲にフェンスを設置し直すように改善要求ができます。最低でもこれくらいまでは事情を調べて、行政や管理側の立場も理解した上で交渉しなければ、ただ単に行政や管理者を批判し、対立の構図を煽るだけでは何の解決にもなりません。
情報や知識が浸透してないよ!
 港湾関係者と連携して取り締まりに当たる、所轄警察署の警察官がSOLAS条約の事も、国内法の事も知らなかったという情報も寄せられました。港湾管理者、海上保安庁、警察の合同保安訓練が各地で行われているはずなのに、参加していたはずの所轄警察署員が知らないというのは困った話なのですが、不法入国は外務省、海上保安などに関しては海上保安庁が主導ですし、保安強化による規制を行うのは港湾管理者の責任であり、警察は港湾管理者からの通報を受けて現行法の不法侵入や器物破損で摘発するのが役目ですから、条約や新しい国内法を知らなくても実務上は問題ないのかもしれません。
便乗規制じゃねーか!
 改正SOLAS条約の発効と同時に、保安強化対象エリア以外の"従来からの立入禁止場所"の取り締まりも強化されています。保安対策強化の対象であろうとなかろうと、立入禁止の港湾施設への侵入は不法侵入です。ここのところを間違えないでください。
 釣り人やレジャー客にしてみれば、釣り場や海辺の憩いの場所を失い、怒り心頭といった方もいるでしょうが、港湾部周辺住民のみなさん(港湾部への道沿いの住民を含む)の意見として、立入禁止エリアの規制強化、罰則適用の厳格化について、
「非常にありがたい。生活安全の確保と治安向上のためにも、
 早くやって欲しかった」
「罰則が適用されないから、治安が悪かったんだ。ビシビシやれ」
という意見も少なくないのです。自分達まで港で釣りや散歩ができなくなっても、周辺住民のみなさんが日々平穏で安全な暮らしを望むのは当然ですよね。
※参考釣り禁止! 釣り人は嫌われ者!?
 規制強化の本来の目的は、テロリスト、犯罪者、暴走族の締め出しによる治安維持です。結果として、釣り人も締め出され、庶民の憩いの場も失われているのですが、周辺地域のみなさんの意見なども含めて、実情を知るに従って「釣りぐらい許してくださいよ」とは言えなくなってきました。
 港湾にやってくるのが、一般人なのか、テロリストの一味なのか、簡単に判別する方法はありませんから、一律規制をせざるを得ない。個別に身分証明書の提示を求め、記録していくとなると、設備や人的な投資を "税金で" まかなう事になります。遊び客を通すための税金投入を国民の一人として、あなたは認めますか? 
「元から立入禁止なんだから、そんな無駄な金を使うな!
投資の合理性からしても、これまた当然の答えですね。
説明責任はどうなってんだよ!
 行政や管理者サイドから、事前説明や告知が充分になされず、釣り場を失った釣りファンだけではなく、釣り業界も大ダメージを負っています。黙認とはいえ、従来は"是"であった立ち入りが"非" になるのですから、規制を行う行政と港湾管理者側は「なぜ規制強化が必要となるのか」について、事前にわかりやすい説明や告知すべきだったと思います。しかし、釣り人も釣り業界も事を甘く見すぎていました。自分たちに大きな影響を及ぼす可能性があるのに、自分から動いて情報を集めたり、確認をしなかったのですから、仮に廃業に追い込まれたとしても「何もしていないのに潰された」のではなく「何にもしなかったから潰れた」と言われても仕方ないでしょう。お役所は聞いてもなかなか教えてくれないのですから、聞かれてもいない事を教えてくれるはずがありません。乱暴を承知で引き合いに出しますが、官に保護されていると言われている業界の各社は、それなりに人を配し、お金も使って、自分たちに影響が及びそうな情報をキャッチするアンテナを高く上げています。いち早く業界に影響しそうな情報や動向を察知して、迅速な対応をとっているからこそ、保護されているかのごとく生き残っているとも言えます。
おまえ、どっちの味方なんだ?
 行政や管理側、取り締まり側の肩を持つつもりはありませんが、こういった不手際や情報浸透の遅れなどの事例はまだまだ出てくると思います。だからといって、その不手際をあげつらって責めたところで釣り場が開放されるわけでもないでしょう。
「おまえはどっちの味方なんだ!」「なんで怒りもせず、冷静でいられるんだ!」とお叱りを受けそうですが、私の味わった憤りは、期間も深さも質もみなさんの数倍に及ぶと思います。
 「改正SOLAS条約によって釣り場が失われる!」と気付いた、2003年11月からず〜っと焦燥感、危機感、不安感、無力感、失望感をかみしめてきました。条約発効までカウントダウンの状態に入っているはずなのに、具体的な公式情報は出てきません。関係しそうな行政や港湾管理の関係部署に電話を入れ、アポイントが取れれば直接取材に赴きました。個人での取材活動ですから限界があります。その間、この条約が釣りにもたらす影響に危機感を持ち、協力してくれる所はどこもありませんでした。情報だけ提供させて、手柄は掠め取ろうという所はありましたけど……。もう、こうなったら一人で調べて、自分のサイトで警鐘を鳴らすしかない、と腹をくくるしかありませんでした。
 「国際条約による釣り場の閉鎖」という話が大きすぎて現実感に乏しかったのかもしれませんが、釣具メーカー、釣具店、釣餌店、釣り雑誌各社、釣り団体も、今回の一件を甘く見ていたのでしょう。3〜4月の時点で情報を知らせた釣り業界の反応を挙げておきます。
某釣具メーカー社長
「ふふん(薄笑)、どうせ掛け声だけだって。
 何億も金かけてフェンスなんか作らないよ。
 あなたが掛け声に踊らされて騒ぐのは勝手だけど、
 今まで通り黙認するよ」
某大手釣具店
「そんな大事(おおごと)ならお役所がなにか言ってくるでしょ?
 ウチは静観しますわ」
某釣餌店
「わたしらの商売はなるようにしかならん。
 悪い情報は聞きたくない!(帰れ!)」
某釣り雑誌
 A誌「この件については弊誌では触れません。
    取り上げるつもりもないです」
 B誌「コレは反対も批判も出来ませんから、記事にするのは……。
    でも情報はください」
じゃぁ、あんたの本音は?
 行政の硬直したお役所仕事ぶりと秘密主義、釣り業界の鈍感さに呆れかえりましたね。行政には「どこの誰から集めた金で飯喰ってやがんだ!」と怒鳴りつけたい気持ちもありましたが、予算審議、国内法の制定など手間も時間も掛かる作業をしてからじゃないと公式情報を出せないのは理解できます。ましてテロ対策なので、根ッきり葉ッきり明かすわけにもいかない事情もあったでしょう。むしろ釣り業界の無関心さというか、危機感の無さ……。顧客である釣り人に、いち早く情報を提供するのも仕事のはずです。
 まぁ、釣具メーカー、釣具店、釣餌店にとって、マイナスイメージの情報は出したくないという心情は理解できます。釣り雑誌も商業誌ですから、広告主であるメーカーにとってネガティブな情報は掲載しづらいでしょう。しかし、釣りマナーやモラル啓発の一環として「テロ対策で港湾立入規制が強化される。厳罰も予想されるから規制エリア情報に注意!」のアナウンスがなぜできないのか不思議でした。

吉野家コピペ風に本音をぶっちゃけるなら、こんな感じです。

 もうね、アホかと。馬鹿かと。国際条約だよ、国際条約。自分たちの商売に直接影響して、干殺しにされるかもしれないってのに、釣具業界も釣り人も『どうせ掛け声だけだ』とか言ってるし。めでてーな。補正予算で保安対策強化資金の工面は出来てるってのに、
 『よーし、ウチは静観しちゃうぞ』
とか言ってんの。もう見てらんない。
 おまえらな、情報やるから早く釣り人に知らせろと。釣り業界ってのはな、もっと敏感であるべきなんだよ。ライバル店やライバル誌に、いつ追い抜かれてもおかしくない、特ダネを抜くか、抜かれるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。日和見野郎はすっこんでろ。
 で、某釣り雑誌に話を持って行ったら、編集部のヤツが
 『情報だけください。でも取り上げない』
とか言ってるんです。そこでまたぶち切れですよ。あのな、様子見なんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。得意げな顔して何が、情報だけください、だ。おまえは釣り人の事を考えてるのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。おまえ、個人に特ダネすっぱ抜かれて悔しいだけとちゃうんかと。
 SOLAS通の俺から言わせてもらえば、今、SOLAS通の間での最新流行はやっぱりネットで情報公開、これだね。ネットの個人サイトで無償の情報公開。これが通の情報公開。
 普通、ネットの情報ってのは感情やガセが入ってる。代わりに情報のソースやマジネタが少な目。これ最低。だからよく考えたSOLAS通は公式発表や報道をベースに、関係先に直接取材をかけて記事にする。裏付けバッチリ、感情、憶測抜き。これ最強。しかし、ここまでキッチリ調べてあげて公開すると、官公庁や米軍にもブックマークされるという危険も伴う、諸刃の剣。素人にはお薦め出来ない。
  まぁ、釣り界のピンチに危機感を持たない連中は、干殺しにされて廃業するか、摘発されて痛い目に遭ってなさいってこった」

2007年5月現在も、保安対策強化の工事が急ピッチで続けられています。各地の港湾ではテロ防止訓練、治安・安全維持に向けた取り締まりも強化されています。くれぐれもフェンスを破ったり、乗り越えたりして立入禁止エリアに入らないようにしてください。「釣り人は破落戸(ならず者、ゴロツキ)」などとレッテル を貼られては、釣り場はどんどんと減っていくだけです。くれぐれも、現在の釣り人が立たされている立場を忘れないでください。
悪い話ばかりじゃないのよ
 愛知県知多市「名古屋港海づり公園」、静岡県浜名湖の「新居海釣り公園」、福島県小名浜市「アクアマリンふくしま」など、安全施設、管理施設の行き届いた公設釣り場もあります。
海と人と自然、安全に楽しく、釣りの楽しさを体験できます。
しかし、これからは利用者(=釣り人)一人一人のマナー、モラルが厳しく問われます。
危険を避けて事故を起こさない、事故が起きても被害を最小に抑える、他人に迷惑を掛けないといった"釣り人の自己責任"をキチンと果たしていきましょう。